見えているのに見ようとしない医療と健康の分断

2017.06.28
ネットスタイル 山崎博史

ニュータウンに限らず街を見渡してみると、ランニングをしている人をたくさん見かけるようになりました。若い人もいれば、年配の人もいます。また、郊外であれば、歩く会で多くの人がリュックを担いで歩いておられます。駅前にはフィットネスクラブがあります。私は鎌倉近辺に住んでいて、天気の良い日は鎌倉の山を登りますが、こちらにも多くのハイカーが汗をかきながら自然を満喫されています。

フィッネス経営情報誌を発行している(株)クラブビジネスジャパンの資料によると、2010年に3,474施設だったのが、2015年には4,661施設と増えています。また60歳以上の会員数が増えているのも特徴的です。実際に、私もあるフィットネスクラブに入っていますが、昼間はほとんどがシニア世代です。

また、市民マラソンの規模も非常に多くなっていて、全国で2,000以上のイベントが行われいて、飽和状態になっているそうです。走るのではなく、歩くを主眼に置いたウォーキングイベントもほぼ毎日、日本のどこかで行われてます。私の友人はヨガを楽しでおり、室内以外にも公園や浜辺でやはり多くのヨガファンが集っています。おそらくこれほど健康のために運動をしている人は過去になかったのではないかと思います。特に、ランニングは東京マラソンが2007年に始まってからみるスポーツではなく、自分で行うスポーツに変化していき、これが他のスポーツにも広まっている感があります。

一方、高齢者を送迎するディサービスの車も非常に多く見かけるようになりました。その中で、要介護度が低い状態でなるべく自身の身体機能を維持するためにリハビリテーションを行なっています。このリハビリテーションには理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの資格を持った方々が、サポートをしています。理学療法士は、病気や事故などで身体に障害や不自由さを抱える人、また高齢により身体機能の衰えた人などに対して、医師の指示の下でリハビリテーションを行い、運動能力の回復を援助する仕事です。作業療法士は、病気やケガなどが原因で身体に障害や不自由さを抱える人に対して、医師の指示の下でリハビリテーションを行い、日常生活に必要な能力を高める訓練や指導をする仕事です。そして、言語聴覚士は言語障害がおこってコミュニケーションが取りにくい人などをサポートする仕事です。つまり、リハビリテーションには、歩く、走る以外に箸や茶碗を持つ、コミュニケーションが取れるように発声の訓練をするなど、様々な筋肉を元に戻すようなものがあるのが特徴です。

さて、視点を変えて、医療や介護という側面から見て見ましょう。医療は、病気や怪我を負った人が訪れる場所です。介護事業所は介護を必要とする人が集まる場所です。実は、これはサービス提供者側から見た区分です。医師は受診に訪れた患者と初めて会って、検査をして患者のバイタル状態を知ります。そして治療を行い、病気が完治すればそれでこの患者との接点は無くなります。介護では、要介護状態を自治体の職員が面談して認定調査票を書き込んだ後に認定審査会で要介護度が決まって介護サービスが始まります。介護が功を奏して、自立できる状態に戻れる人もいれば、そのまま要介護度が上がっていき、亡くなられることもあります。どちらにせよ、医療機関も介護事業所もこれから必要とされるサービスであることは間違いありません。

では、これほど私たちが健康に気を遣っていても、病気になるときは病気になるし、介護も自分ではまだまだだと思っていても介護が必要となるのはどうしてでしょう。病気や介護になった時にはプロフッショナルなサービス提供者がいて、必要な指導や処置、サポートをしてくれます。しかし、健康な時は、身体に対するプロフェッショナルな提供者はいません。それは、私たちが生まれてから死ぬまで連続した一個体であり、バイタルデータも連続しているのに、サービス提供という側面から見ると、分断されてしまうことにあります。私たちは、学校の健康診断、会社に入っても健康診断と頻繁に体の状態をチェックしています。そして個人でも体重計や血圧計などで体のチェックをしています、が、これらのデータを的確に診断、サポートする提供者が存在しないことにあります。もう一度述べますと、病気になって医療機関にかからない限り医師などのプロフェッショナルな助言、指導を受けることができないのです。では、みなさんどうしているかというと、ネットで健康情報を見て、素人判断するしかないわけです。ここに漬け込んだのが一連のキュレーションサイトであると言っても良いでしょう。

最近のニュースでfitbitやjawboneなどのウェアラブルデバイスがパーソナルな提供から医師などの医療機関での使用を目指していると発表しています。これは先ほど述べてきた分断を連続したものにしようという動きです。健康な時からウェアラブルデバイスを使い、その時々で医師がサポートしていくという流れです。しかもその先には病院の機能さえも変えるイノベーションが起こると言われています。マウント・サイナイ・アイカーン医科大学の理事、エリック・シャド氏は、uberが自身が車を持たないビジネスモデルであることから、未来には現在の病院というものが無くなると予測しています。

私たちが医療ビジネスを考える場合、現在の提供者側からロジックで考えると非常に狭いビジネスモデルになるとともに、この先ビジネスモデルそのものが成り立たなくなる可能性があります。街を見渡し、私たちが生まれてから死ぬまでどのような生き方をしているか、私たち自身からビジネスモデルを考える必要があります。すでに、壁は取り除かれています。

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