介護医療保険の要点とその製薬企業に与える影響 vol.1

2015.02.13
ネットスタイル 山崎博史

概要

 昨今、国民医療費に占める薬剤費の割合に関してさまざまな意見が出されている。厚生労働省の調べによると2009年度の国民医療費に占める薬剤費は8.9兆円と推計されていて、全体の25%にあたるが、包括払いの数値が組み込まれていないため、実際の薬剤費の割合はもう少し大きくなると思われる。このように、正確な薬剤費が把握できない状態では、各国との薬剤費の比較も不正確になり、これによるヘルスケア産業界の生産的議論が期待できないとも言われている。

製薬メーカーのマーケティング部門が特に注視しているものに、診療報酬がある。これは、保険診療の際に医療行為等の対価として計算される報酬のことである。昨今2年に1回の改定が行われており、薬価の改定は製薬メーカーの売り上げに直接響くものである。この診療報酬は、健康保険法及び、高齢者の医療の確保に関する法律に基づいている。

診療報酬改定や薬価改定は、医療機関は言うに及ばず、製薬メーカーにとっても非常に重要な問題であるが、中長期的には、これを支えている社会保障制度を理解しなければならない。2025年問題をはじめ、我々の社会はさまざまな問題に対処しなければならず、国は大きな変革をおこなおうとしている。これによって製薬メーカーも経営方針をしっかり舵取りしなければならない状態になっているのは明らかである。そこで、まず、根幹をなす社会保障制度について述べる。

社会保障制度と医療保険・介護保険

 平成26年6月に通常国会で「医療介護総合確保推進法」が成立した。これは正式には「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法律」であり、6月18日に参議院で可決、同25日に公布され、一部を除き公布日から施行されている(医療法関係は平成26年10月以降、介護保険法関係は平成27年4月以降に、順次施行された)。そして、この法律の趣旨は「接続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所用の整備を行う」となっている。

これは、社会保障の充実と安定化の為に進められてきた「社会保障と税の一体改革」の担保となるものである。

さて、すでにご承知の事と思うがあらためて医療保険、介護保険についておさらいをしておきたい。上記法律の趣旨にも出てくる「社会保障」であるが、これは憲法二十五条に

○すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 ○国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

と謳われており、これに則り、『社会保障制度は疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法または直接の公の負担において経済的保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もって、すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいう。(社会保障審議会「社会保障制度に関する勧告」)』と定義されており、国民の生存権を保障している。  この社会保障制度は、

  • 1)社会保険
  • 2)社会福祉
  • 3)公的扶助
  • 4)保健医療・公衆衛生
から成り立っており、
    1)社会保険の内訳として
  • a)医療保険
  • b)年金保険
  • c)労災保険
  • d)介護保険
  • e)雇用保険

がある。つまり、医療保険ならびに介護保険は社会保障制度の中の社会保険の一部に位置づけられている。

そして、平成20年の社会保障国民会議から議論されてきた「社会保障と税の一体改革」はこのa)医療保険とd)介護保険に関して、多くの改革案を出しており、私たちはこの大きな改革の流れをしっかりと理解しなければならない。

また、医療介護総合確保推進法は、医療法、介護保険法に加えて、地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律の改正、健康保険法の一部改正、生活保護法の一部改正、保健師助産師看護師法等12の法律の一部改正により構成される。とりわけ医療法については平成18年の第5次改正以来の、介護保険法については平成23年改正以来の大きな改正となる。

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